社外からの知見をはっきり伝えることで、
女性活躍に異議を唱える管理職がいなくなった

富士通株式会社 

SVP グローバルデリバリービジネスグループ
ジャパン・グローバルゲートウェイ本部長
齋藤伸一様

Employee Success本部
グローバルソリューション人事部
シニアディレクター
衞藤隆宏様

Employee Success本部
DE&I Catalyst
木村博美様

聞き手 プレジデント ウーマン編集長・木下明子

2024年5月、富士通のSEが集まる組織の管理職向けの勉強会に、プレジデント ウーマン編集長・木下明子が外部講師として登壇。長時間労働、男性社会のイメージが強いエンジニア文化を変え、真の女性活躍に向けた施策について講演しました。その後、起こった社員の行動変容とは。

 課題 
SEという男性社会で女性が活躍しにくい文化があった

 目的 
外部講師の知見をもとに、女性活躍の意義を管理職層に理解させ、
凝り固まった文化を変える

外からの知見で「凝り固まった文化」を変えた

――今回、講演に呼んでいただいたきっかけは、プレジデント ウーマン関連のイベントからだったと伺っています。

木村 はい、2023年12月のプレジデント ウーマン リーダーズサロンの女性役員養成スクール企画の為の座談会と、2024年3月の、同サロンと人事・ダイバーシティの会の「国際女性デー合同イベント」にも参加しました。木下さんがこれまでの取材で獲得した知見、特にデータに基づいた説得力あるプレゼンを聞いて、女性活躍に対する思いの深さも伝わり、何か一緒にできたらいいなと考えていたのです。

 そんなときに、弊社の衞藤から、JGG(Japan Global Gateway、全社ニアショアセンターの役割を持つSE組織)で、社外講師を招いて、勉強会を開きたいと相談を受けました。木下さんが「女性活躍の要になるのは、女性部下を持つ上司だ」と主張されていたので、ぴったりだと思い、推薦させていただきました。

――ありがとうございます。今回はSEの方々向けの講演でしたが、そもそもこちらで女性活躍の勉強会を実施することになったきっかけは何だったのでしょうか?

衞藤 JGGは、日本のITサービスのデリバリー変革を目指して設立された組織です。SE人材が不足する時代にあって、女性をはじめとした多様な人材の活躍に取り組んでいたのですが、なかなか実態として女性の管理職登用につながっていかなかった。昨年、JGGの非管理職の女性社員に昇進意欲についてのアンケートを取り、女性が管理職になるためにどういったところを変えるべきかという質問をしてみたところ、男性を含めた意識改革が必要だとか、女性が登用された際に「下駄を履かせている」といったことを感じて、管理職を目指しにくい風土だという意見が上がってきました。そのときに、一人ひとりが「女性活躍」をきちんと理解してマインドを変えることが必須だと感じたことで、今回の勉強会の企画につながりました。

齋藤 2025年に女性管理職を20%、30年に30%にするという数値目標が設定されています。人材不足もあるのですが、私たちが仕事のやり方をどう変えて、多様な人材を活用し新しいアイデアを出していくかという点が重要だと考えています。

 講演時の質疑応答にも一部あらわれていたと思いますが、フェアに仕事をしているつもりでも、まだまだ男性社会のエンジニアリングビジネス文化で、根強いアンコンシャスバイアスがあるのですね。例えばクオーター制的なものを入れるなど、ハード部分から根本的に変えていかないといけないという点は前から感じていて、衞藤に相談したりしていました。

 私自身入社して32年なのですが、一種凝り固まっている社内文化を変えるという意味でも、説得力のあるメッセージを外部から出してもらった方が、気づきがあるのではと考えました。

――最初にお打ち合わせさせていただいて、私が忌憚なく意見を申し上げたときに、少し不安になられた部分もあったようでしたが。

木村 私は木下さんのおっしゃることをよく理解できたのですが、当初、視聴者をどうするかという部分が少し曖昧な状態でご相談したため、管理職以外の社員が聞くとしたら、少し厳しく聞こえるというか、コンフリクトが起こるかなと感じた部分はありました。結果、管理職を対象と決め、打ち合わせでいくつかリクエストを出させていただきましたが、真摯に向き合っていただき、それでも変えていいところと、変えるべきでない部分をきちんと示してくださった点もすごくよかったです。最後の質疑応答で、「女性だけを取り上げて議論するのはいかがなものか」「今どき男性だ女性だというのでなく平等にすべきだ」的な質問がでたときに、「会社としては、公平にしているつもりでも、実際の昇格数を見たときに男女の差はあるわけで、意識的に女性の活躍を推進しないとその差は埋められない」とびしっと言っていただいたときに、やはり外部の方にお願いしてよかったなと思いました。時代の潮流にマッチした、本質をついた内容になって感謝しています。

齋藤 私も、結果的にはっきり伝えていただいてよかったと思います。その後のアンケートでも、男性管理職がアンコンシャスバイアスによって、良かれと思ってしていたことが実は女性のキャリアには良くなかったのだ、と気づいたという意見が多かったです。

女性活躍に異議を唱える人がいなくなった

――今回の勉強会の後に、何か参加者のなかで行動変容などはありましたか?

衞藤 勉強会の参加者で、90%以上が内容を理解できた、また83%が有効な内容だっただったと回答しており、とても評価が高く、編集部独自のデータをふんだんに盛り込んでいただいたことも説得力が増したという反応でした。

 あの後、JGGリーダーシップメンバー40名弱を集めて、各種戦略テーマを議論する合宿をしました。そのテーマの一つが女性活躍であり、もう少し実務的な部分で、現場で何ができるかについて話し合いました。今回の講演に参加できなかった人にもアーカイブを事前に見ておいてほしいと伝え、結果、女性活躍について疑問や異議を唱える人はおらず、全員が、真剣にどうすればもっと女性活躍を進められるかと、ポジティブに考えることができました。

齋藤 以前は、「女性を優先的に昇進させる」といったことに抵抗がある人がいたと思います。しかし、勉強会の後、前述の合宿では、そもそも女性活躍をやるべきかどうかというような方はいなくなっていて、「どうしたらうまくやれるか」という次元からスタートしたので、私は今回の勉強会で一歩前進したと考えています。

――理解が深まり、行動が変わったのなら何よりうれしいですね。今後、女性活躍について取り組んでいきたいことなどがあればお聞かせください。

齋藤 来年度に向けて、今後の幹部登用について考えていきますが、女性をどう上げていくかが課題ですね。前年度の+1.5%程度で考えています。ただ、今のところ女性たちの直属の上司の多くは男性ですから、バイアスがかかりがちだったり、相談したくてもうまく話せなかったり、といったことがあると思います。そんな意味で、相談できる女性上司のコミュニティをつくることを考えています。

 木下さんが最後におっしゃったように「大丈夫なんだよ!」という声を女性からかけてもらったり、それぞれの家庭の状況などに合わせて、ロールモデル的な役割をしてもらったり、ということを今後やっていけたらと考えています。

衞藤 個人的にも「上司から女性社員に『大丈夫』と言ってあげてください」という最後のメッセージはすごく刺さりましたし、参加者からも「心に残った」という声が多かったです。齋藤が言ったように先輩女性たちに、女性たちが不安に感じている点を聞いてもらい、アドバイスをもらえるといいと思います。

 女性活躍に向けては、育児への配慮が議論されることが多いですが、家庭の事情やキャリア志向はそれぞれ違っていると思うので、どうしたら悩みや不安を解決できるのかという点で、一人ひとりと向き合っていきたいと思っています。もちろん職場の中だけで解決できないことも多いと思うので、我々人事部門も一緒に入って、個別にアクションを取っていきたいと思っています。

木村 今回の勉強会で、全員が女性活躍に対して当事者意識をもてるように、一歩踏み出せたのだと思います。今回のような好事例は全社でどんどん共有させていただき、広げていきたいと思っています。また別の機会がありましたらぜひよろしくお願いいたします。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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