大阪府
大阪府府民文化部男女参画・府民協働課長 三和利恵子様
同課 主事 山本希美様
聞き手 プレジデント ウーマン編集長・木下明子
2024年9月、大阪府の男女参画・府民協働課が主催する「OSAKA女性活躍推進 ドーンdeキラリフェスティバル2024」が開催、今年で8回目。その中の女性活躍推進セミナーの基調講演にプレジデントウーマン編集長・木下明子が「女性が『働きやすい』だけでなく『働きがい』のある企業へ ~女性活躍を進める企業のマネジメント~」というテーマで登壇しました。
課題
男女の分業意識が高く、女性の就労率も全国平均より低い
目的
女性が本当に活躍できるような企業の取り組みを後押ししたい
――まず、今回8回目となる「OSAKA女性活躍推進ドーンdeキラリフェスティバル」が大阪府で開催されるようになったいきさつを教えてください。
三和 我々の部署は、国の男女共同参画社会基本法による基本計画に基づいて、都道府県として大阪府の男女共同参画計画を立てています。2021年~25年までの「おおさか男女共同参画プラン」の横断的な視点として、「性別役割分担意識の解消に向けた意識改革」と、「SDGsの推進によるジェンダー視点の主流化」の2点を掲げています。
「ドーンdeキラリフェスティバル」もその視点の一環として行ってきました。木下さんにご登壇いただいた「女性活躍推進セミナー」は、主に企業の人事担当者や経営層に向けて開催させていただいているものです。
毎年いろいろなものを掲げているのですが、2023年は、「人も組織も成長する」というテーマで女性活躍を進めることが企業の成長につながるというテーマでした。これまでは企業側の視点にスポットを当てたテーマが多かったのですが、今年度は、「女性自身の活躍のために企業ができること」といったテーマで、働く女性の視点からの内容を企画しておりました。そこで、ご著書『図解!ダイバーシティの教科書』を読ませていただき、木下さんに辿り着いたのです。編集者としてキャリアを積んでいてマネジメント経験もあり、かつ子育て中ということで、リアルなお話が聞けるのではと思い、お声がけさせていただきました。
――本を読んでいただいてありがとうございます。実際、基調講演を聞いていただいて参加者の反応などはいかがでしたか?
三和 事後アンケートをとったのですが、参加者から「今までにない話が聞けた」といった声が多く、私たちとしてもこれまでと視点を変えた企画で狙い通りの結果が出たようで、とてもうれしかったです。事前打ち合わせの際から、木下さんが「企業は育児や家事をサポートする場ではない。キャリアを応援してほしい」とおっしゃっているのを聞いて、私自身は、これがとても強い言葉だなと感じ、非常に感銘を受けました。ただ、参加者の方がどう受け止めるのだろうか?という不安は多少ありましたね。けれども、講演中の雰囲気を見ていても反応が良く、よい意味で参加者にショックを与えてくださったと思います。結果的にはとても評価が高く、実りある講演になったと思いますし、私たちも本当にたくさんの気づきがありました。
山本 今回、「大阪府男女いきいき事業者表彰受賞事業者」として、明治安田生命保険相互会社さまと株式会社アイエンターさまにも一緒に登壇いただきました。男女いきいき制度は「登録」「認証」「表彰」の3ステップで実施しており、登録の際には各事業者の状況や取り組みを簡単にヒアリングし、両立制度のこともお伺いしています。私たちとしては「育休や時短を一定期間は取れますか?」といった質問をさせていただくのですが、今回のお話を聞いて改めて、長く取得できればよいというものではないという気づきがありました。
人によっては周りに頼りづらかったり、お子さんをしっかりケアしなくてはならないような方もいらっしゃるので、必要な方のために育休や時短が取れる環境を整えることは大切だと思います。ただ、ライフイベントを迎えたすべての方が長期間制度を使うべきだということではなく、あくまで、ご自身のキャリアプランや環境に合わせて取っていただくことが大切なのだと認識しました。
――参加者のみなさまに理解いただけて私もほっとしました。他の地方都市と比べて大阪は大都会ですが、大阪ならではの問題だと感じる点はありますか?
三和 大阪は圧倒的に中小企業が多いので、大企業の事例ばかりを取り上げると、「中小だから同じようにはできない」という反応が来てしまうこともあります。ですから、中小企業でも取り組めるような事例を取り上げることで、企業規模にかかわらず女性活躍推進に当たり前に取組めるんだ、という方向に変わっていく一つのきっかけになるよう、引き続き工夫し頑張っていきたいと思います。
山本 大企業においても製造業や建設業などからは、女性活躍推進の取組を進めるのが難しいとお聞きすることがあります。すべての事業者さまに積極的に取り組んでいただきたいという思いもあり、昨年は、「大阪府男女いきいき事業者表彰」で受賞されたパナソニック ホームズ株式会社さまに当課主催の企業向けセミナーに登壇いただき、昇格制度運用において女性を積極的に昇格させる取り組みなど、女性のキャリアを応援する事例をご紹介いただきました。このような取組を参考に、今後も様々な業種においてできることから取り組んでいただければ、と考えています。
――現実に沿った事例を紹介するのは取り入れやすくてとてもよいですよね。大阪府は、女性の就労率が全国平均より低いようです。
三和 そこは大きな課題と認識しています。大阪府に限らず一般的に、男性と比較して女性のほうが、就職した後にライフイベントなどをきっかけに退職してしまい、その後、非正規で再度働くというケースがまだまだ多いようです。
また、これも大阪だけの問題ではないですが、やはり日本は性別役割分担の意識が非常に強いと思います。木下さんも講演でおっしゃっていましたが、男性がメインで稼ぐという家庭が親世代はほとんどですよね。そういった親御さんの元で育つと、自分も同じような家庭をつくるのだと刷り込まれてしまいがちです。そこを打破するためには、できるだけ早い時期からの教育が必要だと考えていて、子ども向けの教材なども制作しているんですね。
これからは、女性がきちんと企業で働きがいを持って長く働き続けられるような状況というのを、企業の方でつくることを考えてほしい。「制度を整えて、女性が長く休めるようにしてあげた」というのではなく、女性自身が本当に求めているキャリアや自己実現のサポートといった視点を取り入れていただき、意欲的な方にはどんどん上に行けるような形の取り組みをしていただきたい、という点を発信していかないといけないと思っています。
その意味でも、木下さんがおっしゃることは本当に、理想と思っていることと合致していると思います。今、2026年からのおおさか男女共同参画プランの策定に向けて準備しているところですが、現在の計画の目標も正直、達成できていないところもあるんですよね。今回は特に、新型コロナウイルス流行前後における意識変容や社会変容を見ながら、来年度いっぱいかけて計画を立てていきたいと思っています。
効果
「女性のキャリアを応援する」という新しい視点を与えてくれた
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
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