労働組合という内向き組織に、
ダイバーシティという風を吹き込む

   


マルイグループユニオン

中央執行委員長  金田素樹様
中央副執行委員長  上野瑛子様


Shiseido union
中央執行委員長   金子純子様

聞き手・プレデント ウーマン総研 研究所長 兼 編集長 木下明子

これまで企業以上に長時間労働が当たり前だった組合活動を変えて多様な人材の参加を促すべく、2024年からユニオンダイバーシティプロジェクトをスタートしました。2025年6月に開催された第2回のフォーラムに、プレジデントウーマン総研研究所長 兼 編集長木下明子が「DE&Iの最新トレンドと日本企業におけるリアル」というテーマで講演。その反響と組合におけるダイバーシティ推進についてインタビューしました。

 課題 
労働組合という組織が内向きで変化しにくかった

 目的 
ダイバーシティのトレンドや他社の状況を知ってほしい

組合は「過度に女性に優しい制度」を提案しがち

――まず今回のイベントで私にお声掛けいただいたきっかけを教えてください。

金田 ちょうどユニオンダイバーシティプロジェクトが2年目に入るタイミングで加盟労組の状況について振り返ってみて、参加者に最新のダイバーシティトレンドをインプットしてほしいという思いがありました。労働組合というのはとかく、自社の内側に目が向きがちな組織です。ですから、外の組織を知り、そうすることで改めて自社の立ち位置を確認することがとても大事だと考えたからです。また、わざわざフォーラムにきていただく動機付けという意味でも、今回はぜひ外部講師を呼びたいと思いました。

上野 ぜひ今回は、参加者にDE&Iの最新のトレンドや他社の状況をインプットしていただきたいと思い、いろいろな企業の事例をご存じで、今、企業が何をするべきかについて知見のある方をネットなどで探していました。そこで、各種のエビデンスやデータをお持ちで、かつこの他社の状況含めてテーマに大変造詣が深く、ご自身も子持ちの女性ということで、木下さんが候補に挙がってきたんです。

 ご著書『図解!ダイバーシティの教科書』も拝見したのですが、その中で木下さんが「女性に優しい制度をたくさん用意することが真のDE&Iではない」的なことを書かれていて、この視点にとても共感しました。組合という組織は「労働者の権利を守る」という意味で、どうしても長期間の育休や時短勤務など、過度に女性に優しい状況を会社に提案しがちなのですが、女性活躍という観点から見ると、必ずしもそれが正しいわけではないのだという視点に、他のユニオンの方もはっとさせられるのではないかと思って、お声がけさせていただきました。

――ありがとうございます、私が著書の中で一番伝えたかった部分を読み込んでいただいて嬉しいです。実際講演を聞いた方の反響はいかがでしたか?

金子 アンケートの満足度はすごく高かったです。やはり「女性の昇進意欲は男性より低いが、昇進したら女性の方が幸福度が高い」「育休が長い女性ほど昇進意欲がなくなる」といったことを、エビデンスとともに客観的に解説いただいて、参加者もこの手のデータはあまり見たことがなく、とても分かりやすかったという声が多かったですね。

 やはり日本におけるDE&Iの一丁目一番地は女性活躍だと思いますし、組合活動においても女性の両立支援といったことは重要なのですが、ただそこを支えるのもまた組合員なので、女性活躍だけにスポットを当てるのが本当のDE&Iではないと思っていました。その点も、本質的なことからすごくわかりやすく解説いただいたのもよかったですね。

金田 参加者は製造業や自動車関連企業の労組から来た男性が多かったのですが、やはりデータに非常に腹落ちした様子でした。数値的な部分以外にも、講演後に出た「上を目指したいけれど両立を考えて悩んでいる女性にどんな声をかけたらよいでしょうか」という質問に対して「大丈夫、と言ってあげてください」とお答えいただきましたが、こういったことは、女性のマネジメント経験があまりないとどうしていいかわからないことなので、しっかり後押しする一言をいただいて、すごくよかったなと思います。実際、「そこがとても印象的でした」という感想もいただいています。

上野 質疑応答のときのやり取りは私も本当によかったと思います。組織の中で、いろいろなレイヤー、そしてダイバーシティのレベル感も多様な方が来ていましたが、ちょっと「(女性に)下駄を履かせているという意見がある」など、DE&Iに対してのモヤモヤ感についての素直な質問について、一つ一つ、どんなふうにアプローチしていくのかも含め、すごく当事者に近い目線でお答えいただけたなと。

 実際、感想の中にも「組合活動というものは女性の役員が少なく、実際打診しても女性に断られることが多いけれど、ではどうしてそうなるのか、女性から見たときに組合がどう見えるのかといったことがわかってヒントになった」という声がありました。そういう意味でDE&Iという観点で、自分の組織に対しても示唆があったところがよかったと思います。

「24時間働けないとダメ」という風土を変えたい

―――今回のフォーラムの後に何らか参加者や参加労組に変化はありましたか?

金田 
9月にDE&Iの事例研究会を予定しているのですが、そこで進んでいる企業に発表してもらうんです。弊社も資生堂さんも企業の取り組みとして進んでいる方だと思うのですが、今回のお話を伺って、参加者の反応も見て、改めて自社が向かっている方向は間違ってないのだと思い、安心しました。

金子 社内がそれなりに進んでいるだけに、他の企業や労組から個別にいろいろ教えて欲しいと言われることが多いのです。どうしていいかわからないという企業も多いので、個別対応より、一緒にDE&Iの輪を広げていきたいと思ってます。その中で、木下さんがおっしゃっていた「違いを認めて共創していくこと」が大切というお話をしていただき、やはり方向性は間違っていなかったと安心しました。そのためには対話が必要ということだったので、2025年9月に予定している次の研究会のテーマを「対話」にすることにしました。「対話」の取り組みを進めている複数の企業事例を発表してもらおうと思います。

金田 今回は2回目のダイバーシティフォーラムだったのですが、2回とも、懇親会を含めて17時までで終了にしました。参加した方もおっしゃっていましたが、組合の活動でこういったスケジュールはとても稀で、特に懇親会などは仕事が終わってから19時くらいの遅い時間にスタートすることが多いのです。今回のフォーラムを受けて、「17時終了って大事ですよね。こういう形にできるようチャレンジしたいと思います」という声は上がっていますね。

 やはり、組合活動は一種公人的というか、「使命感をもって身を削ってやる」的な組織という伝統があり、仮にやりたいという気持ちがあっても24時間働けない人はダメ、みたいな文化があるんです。なので特に、ライフイベントと両立中の女性を含めて多様な方が参加しにくい組織ではあったんですね。そこをまずは変えていきたいと思ってます。

金子 最初に金田さんがおっしゃっていたように、組合って内向きな文化が強いんですね。「こうあるべき」といったバイアスが強く、特に組合専従になってしまうと、会社の仕事より長時間労働になりがちで文化が変わりにくい。私も本当に一緒にやってていいのか?と思ったことがあるくらいです。「この空気を変えないと先はないな」と思いました。「やってみたい」という思いがあれば、どんな人でも参加できる組織にしたいという気持ちでやっています。

金田 世の中的にも鉢巻を巻いてこぶしを振り上げて頑張るみたいなイメージがまだまだ根強く残っていて、それがなかなか企業情報のようにアップデートされないんです。伝承ですべて成り立っているという感じが否めないので、今回のようなフォーラムをきっかけに、外へのイメージもアップデートしていけたらと思っています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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