女性管理職比率25%を達成!
「誰もが活躍できる」組織を目指すための施策とは

 

三井住友海上火災保険は、2025年度までの目標として掲げていた女性管理職比率23%は2024年に前倒しで達成し、2025年は25%まで向上しました。同社は中期経営計画の基盤に「多様な社員全員の成長と活躍」を据え、組織変革を加速させています。

今回は、同社人事部で「多様な社員全員の成長と活躍」を牽引する柴山佳瑶子氏をゲストに迎え、目標達成までの具体的なプロセスと、次なるステージに向けた展望について詳しく伺いました。

※この記事は2025年11月6日に開催されたウェビナーの内容をもとに構成しています。

 

 

三井住友海上火災保険株式会社

人事部 柴山佳瑶子様

聞き手:木下明子(プレジデント  ウーマン総合研究所 研究所長兼編集長) 

――まず、御社の「多様な社員全員の成長と活躍」と目指す姿についてお聞かせください

柴山 当社は、MS&ADホールディングスの中核として、3つの損害保険会社と2つの生命保険会社と共に歩んでいます。現在、中期経営計画の基盤として「多様な社員全員の成長と活躍」を掲げています。 損害保険を取り巻く環境は今、劇的に変化しています。自然災害の激甚化や気候変動、さらにはサイバーリスクの拡大。従来の価値観や伝統的なビジネスモデルが通用しなくなっている中で、社会課題を解決するイノベーションこそが持続的成長の鍵となります。 そのために掲げたのが「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」という目指す姿です。この戦略の実現には、多様な人材の確保と活躍が不可欠だと考えています。

――非常に明確なビジョンですね。
その中でも、女性活躍についてはどのような目標を掲げ、取り組まれているのでしょうか?

柴山 中期経営計画(2022-25年度)では、「女性管理職比率23%」「ライン長比率20%」を目標としていましたが、女性管理職比率23%は2024年に前倒しで達成、ライン長比率20%も2025年に達成しました。またグループでは、政府が掲げる2030年30%にならい役員、管理職ともに30%を目標に掲げています。

――目標の早期達成は素晴らしい実績ですね。
具体的な育成プログラムや、キャリア支援の施策にはどのようなものがありますか?

柴山 女性活躍を支援する研修の体系図をご紹介させていただければと思います。
 


 

 1つ目がリーダーシップ、2つ目はマネジメント、3つ目は実業務につながるスキルについての研修を組んでいます。
 加えて「女性リーダー育成プログラム」を今年度からトライアルとしてスタートさせました。こちらは、メンタル的なフォローを中心に、5カ月にわたって管理職候補の女性達が自分の所属するライン課長と、ライン部長のもとで行う研修になります。各5回、合計10回のメンタリングの要素をもつ1on1を通じて女性リーダーを育成していくプログラムです。

 また、研修とは別に新たなチャレンジを支援する取り組みとして「社内トレーニー制度」や「ポストチャレンジ(社内公募)制度」、「プロジェクトチャレンジ制度」や「副業」など、自ら手を挙げて新たなフィールドに挑める制度を複数用意し、自律的なキャリア形成を後押ししています。

――「自ら手を挙げる」仕組みが整っているのですね。
一方で、組織全体の意識改革、特にマジョリティ(多数派)側へのアプローチについてはどのようにお考えですか。

柴山  非常に重要な視点です。無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)は、多くの場合マジョリティ側から生まれます。そこを変えない限り、真の風土改革は起こりません。そこで私たちは「3つの柱」を立ててアプローチしています。

――組織の意識改革のために掲げられた「3本の柱」について、具体的にお聞かせください。
まず、1本目の柱は「キャリアの自律」に関することだそうですね。

柱①:会社に言われた通りに転勤できる人が出世するのか?

柴山 はい。以前は人事主導の異動がメインで、男女の役割区分や転居の可否による区別もありました。しかし、今年度スタートした人事改革では「在籍4年目の社員は他の部署へ手を挙げなければならない」というルールを設けました。 自分はどの部署で、何をしたいのか。自律的にキャリアを考えて行動してほしいという思いがあります。

――「4年で手あげ」というのは、かなり思い切った仕組みですね。社員の方々の反応はいかがですか?

柴山 いまちょうど次年度の異動に向けて選考中ではありますが、応募数としては昨年の4倍、約3,000名が次はここの部署に行きたいですと手上げをしている状況です。

私自身「人事部に行きたいです」と自ら希望して異動してきた経験があり、自律的なキャリア形成の重要性を身をもって感じています。

――それでは、2本目の柱である「両立」についても教えてください。

柱②:「両立」は当事者だけの問題なのか?

柴山 当社の年齢分布でみると、30代前後がボリュームゾーンになっていますが、今後この層が育児と仕事の両立に直面する世代になってきます。ここで大切なのは、女性のキャリア実現には「男性の育児参画」が不可欠であるということです。当社では男性育休1カ月取得を奨励しており、2022年から取得率100%を維持しています。平均取得日数も、2014年の2.9日から、現在は41.6日まで大幅に伸びました。引き続き男性育休1カ月取得推進は継続していき、そして希望に応じた育休期間を取得できるような組織体制をしっかり組んでいきましょうとメッセージを出していきたいです。

――そこで話題の「育休職場応援手当」が登場するのですね。
 

柴山 はい、その通りです。この施策も、「両立」は当事者だけの問題なのか?という点へのアプローチが端緒となっています。施策を考える時に人事部内でディスカッションし、当事者に対する支援ではなく、当事者を支える職場メンバーに対する支援を行うことで、「職場メンバー」と「育児中社員」との溝を埋め、出産をお祝いする風土が作られるのではないかと考えていきました。
 私自身、子どもが2人いて産休・育休を2回取得しましたが、子供が生まれるという本来はうれしい報告のはずなのに、「申し訳ないです」「育休を取らせていただきます」ということを言った記憶があります。そうならない状況をつくるために、当事者の同僚向けに「育休職場応援手当」を新設しました。

  育休職場応援手当は、すでに半数以上の社員が受け取っています。私のチームでも今年、3ヶ月の男性育休取得をした同僚がいます。
 新卒やキャリア入社の社員から、この育休職場応援手当が新設されたことによって、「会社として育児をそれだけ重要なものと捉えてくれているんだ」という声ももらっています。
 

――当事者のキャリアと育児の両立についても力を入れられていますね。
 

柴山 「ワーキングママ・パパ支援プログラム」という、3ステップに分けた段階別のアプローチのプログラムを実施しています。1つ目が産休・育休取得前のアプローチ、2つ目が産休・育休中のアプローチ、最後に、復職後のアプローチという、3ステップのプログラムになっています。
 各時期に実施すべきことを体系的にして、スムーズな職場復帰をサポートするものになっています。「MSクラウドソーシング」という、育休中でも元の仕事の一部を切り出して少しだけ働ける仕組みも用意しています。
「外部講師を招いてのワークショップ」も開催していますが、木下さんにも2023年と24年にご登壇いただいて、両立社員とマネジメント層の背中を押していただきましたよね。
 

――はい、本社と自動車営業部の方で、2回も声をかけていただいて、ほぼ同じ内容で公演させていただいて、本当に光栄でした。反響はいかがでしたか?
(2023年10月の本社での講演記事はこちら)

(2024年2月のモビリティマーケット部門での記事はこちら
 

柴山 実際に、参加したメンバーからのコメントによると、木下さんにお話しいただいて、「育児や家事の代行サービスを利用することの後ろめたさみたいなのがなくなった」「両立についてすごく悩んでいたけれど、ポジティブに取り組むことがでできるようになった」といったコメントがありました。「昇進意欲が高まった」とか、短時間勤務や育休を長期間取得した場合と、早期フルタイム復帰した場合の生涯賃金の比較データを見せていただいて、「短時間勤務からフルタイム勤務に戻すことを考えるきっかけになった」という声も上がっています。
 一緒に参加したマネジメント側からも「女性社員との接し方や、育児とキャリアの両立というところについて新たな考え方を得られた」というコメントをもらいました。
 

――お役に立てたらうれしいです。御社は急速に管理職比率も増えていますが、施策を進める上で何か課題や困難などはありましたか?
 

柴山 やはり「自分はマネジメントに向いてないんじゃないか」とか、「マネジメントなんてできない」という思考を持っている女性の方が多かったかなと。特にマネジメントになる1歩手前の、当社でいうところのプレマネジメント層にこのタイプが多かったと思います。
 対策としては、やはり木下さんにお話しいただいた通り、「マネジメントに正解はなく、それぞれの人にあったマネジメント法がある」とか「アウトプットできることはやっていこう」といった考え方をインプットしてあげるということも1つですし、会社全体として働きやすい会社にしていこうというような取り組みをしたというところもポイントだと考えています。

「このスタイルだったら私にもマネジメントできるかも」と考えてもらえたらいいですね。
 

――当事者も周囲もハッピーになれる仕組みですね。
最後、3本目の柱は「働き方」そのものへの切り込みです。

柱③働ける人は自由に残業できる方がいいのか?

柴山 当社では2024年の4月から経営目標に「定時退社」を掲げています。スキルアップのための自己研鑽や、育児や介護との両立をしやすくし、会社生活だけでは経験できないような多様な経験を積むことが目的です。全社員が定時退社できる環境整備として、2024年12月には業務の効率化を進めるために、社内の標準ルールというのを定めました。「会議は45分以内に収める」や「社内メールでは形式的なあいさつ文を省略する」といった、社員の小さなストレスを回避するためのルールを定めています。オフィスの定時消灯の時刻も以前の19時から段階的に早め、24年の7月からは6時半、25年の4月からは6時にしています。電気が消えることで、意識が切り替わり帰りやすい状態になる効果が見えています。

――「残業を前提としない」組織への転換ですね。
ただ、業務量を維持しながらの定時退社はハードルも高いのではないでしょうか。

柴山 おっしゃる通りです。しかし、一部の「残業ができる特定の社員」に負担が偏る構造は、もはやサステナブル(持続可能)な組織とは言えません。 かつてのように「時間の制約なく働ける人」は社内でも減少傾向にあります。残業を前提とした働き方のままでは、多くの社員にとって働きにくい環境になり、ひいては優秀な人材を安定的に採用・保持していくことも困難になります。こうした危機感から、ワークスタイルの変革を重要課題と位置づけました。

具体的には、コロナ禍の2020年からリモートワークを導入し、21年にはドレスコードフリーや副業制度をスタートさせるなど、柔軟な土壌を整えてきました。2025年からは、定時退社後の時間を活用して社員同士が越境してつながる「社内サークル」の支援も始めています。

こうした一連の「働き方改革」の成果は、数字にも顕著に表れています。例えば、育休から復職する際に「短時間勤務」を選択する社員の割合です。2014年時点では66.4%に上っていましたが、定時退社を経営目標に掲げてからは53%まで減少しました。 「会社全体で早く帰る文化」になったことで、短時間勤務を選ばなくてもキャリアと育児を両立できるという自信に繋がっているのだと考えています。2025年度上期の平均退社時間は全社的に17時台を維持しており、今後さらにフルタイムで復帰する社員が増えていくと予測しています。

――私の講演でも、意欲的で可能な方には「早めのフルタイム復帰」を推奨していますが、環境が整えばこれほど数字に表れるのですね。

柴山 ありがとうございます。冒頭に申し上げた通り、いま社会では激しい変化が起きており、お客様のニーズも極めて多様化しています。かつてのビジネスモデルでは「早く、安く、大量に」という価値観が求められていましたが、昨今は多様な視点を掛け合わせた「新たな価値創造」こそが不可欠になっています。

 だからこそ、多様なバックグラウンドを持つ人材が共に働き、性別を問わず等しく活躍でき、男性の育児参画も当たり前という社会を、実現していかなければなりません。単に時間を短縮するだけでなく、限られた時間内でいかに効率的に働き、個々がスキルアップを通じて付加価値を高めていくかという視点も、非常に大切だと考えています。

「限られた人材と時間で、いかに最大の成果を出せるか」――その成否が会社の生き残りを分ける時代において、一人ひとりの働き方を根本から見つめ直し、変革し続けることが重要だなと思います。

――「多様な社員全員の成長と活躍」を「経営戦略」として捉え、「定時退社」を軸に育休後のフルタイム復帰を増やすという実利的なアプローチは、多くの企業にとって大きなヒントになるはずです。「限られた時間で最大の成果を出す」という文化への転換が、今後さらにどのようなイノベーションを貴社にもたらすのか。2030年の目標達成に向けた次なるステップにも、引き続き注目していきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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