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「女性に優しい制度」が活躍を阻む?育休・時短の落とし穴と早期フル復帰支援の重要性

目次[非表示]

  1. 1.「女性に優しすぎる制度」が女性のキャリアを阻む
  2. 2.制度を使わない人とのいらぬ軋轢が
  3. 3.サポートする側にお金で報いることの重要性
  4. 4.早期復帰希望者にこそ、きちんとしたサポートを
  5. 5.男性育休こそが「男の家庭進出」の第一歩
  6. 6.育児は女性のもの、という「タダ乗り」時代の終焉

 「女性に優しすぎる制度」が、実はキャリア形成の壁になっている……。手厚い支援がなぜ「マミートラック」や組織内の軋轢を生むのか。本記事では、不公平感を解消する人事考課のポイントや、ダイキン工業等に学ぶ「早期復帰支援」、そして女性活躍と表裏一体である「男性の家庭進出」の重要性を解説します。

※本稿は、木下明子『図解!ダイバーシティの教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「女性に優しすぎる制度」が女性のキャリアを阻む

 2022年現在、日本における法定の育児休暇は1回の出産につき最大2年、時短勤務は子が3歳になるまでですが、多くの大企業では法定を超えて、育休3年、時短は子が小学校を卒業するまでとしています。出産した女性社員は、1年以上の育休を経て、復帰後数年間は時短勤務になることが慣例化している企業も少なくありません。

 「これだけ頑張って女性に優しい制度を整え、たくさんの女性が利用しているのに、女性管理職比率が上がらない」という声を、人事担当者やマネジメントの方からよく聞きます。

 しかし実は、こういった日本の法定を超えた制度とその運用こそが、女性活躍が次のステージにいくことを阻んでいるのです。

制度を使わない人とのいらぬ軋轢が

 「女性に優しい制度」を全員にフル活用させて、家庭中心で長くゆるく働かせるのは女性活躍ではありません。もちろん必要な人はフルに使えばいい。とはいえ出産した女性が、すべて時短を取ってマミートラックに行く必要もまったくありません。

 長期間の育休、時短は本人のキャリアにも影響がありますが、制度を使っていない人との軋轢も生まれています。『プレジデント ウーマン プレミア』2020年秋号「『時短ママはズルい』という空気は、どこから来るか」という記事で使用した調査(白河桃子氏との共同調査)です。

出典/『プレジデント ウーマン プレミア』2020年秋号調査より。対象は過去3年以内に時短勤務者と働いた経験があり、自身は現在両立支援制度を使っていない20~49歳の非管理職、正社員、男女各150人。

 制度未利用者(男女両方)に聞いたところ、女性の約25%は不公平だと感じています(男性は、どちらとも言えない、要するによくわからないという人が多いです)。

 実際、制度を使っていない人の声を聞いてみても、「女性同僚が順番に産・育休に入る状態で(育休中の人の)もともとの一人分の仕事量がわからない。育休や時短の人の穴埋め分は手当されていない」「子供がいなくても責任が軽い部署に行きたいけど、時短の人でいっぱい」「上司が『時短の評価を決める目標をどこに置いたらいいのかわからない』と言って評価が厳しくない」「女性ばかりが制度を使える。転勤にも配慮があって(男性から見て)ズルい」といった不満の声が、たくさん聞こえてきています。

 制度利用者がごく少ないときは、組織内で適当にやりくりして何とかカバーできました。しかし今は、育休や時短取得者が部署全体の2割以上というケースも少なくなく、大企業では全社で数百人、数千人規模になっていますので、もはやそうはいきません。

サポートする側にお金で報いることの重要性

 まず軋轢を解消するために企業がやるべきことは、時短中の人をサポートする側にお金で報いること、人事考課にも反映すること、またテレワークなどの柔軟な働き方を全社的に普及させることです。大量に時短取得者がいる組織の場合は、これだけでかなり軋轢が解消されます。

 長期間の育休や時短が、どうしても必要な方はいます。例えば、育児と介護がまとめて来てしまった、産後、母子どちらかの体調が悪い、あるいはパートナーの方の病気や転勤など。今後はシングルで産む女性も増えると予測されるので、そこも配慮が必要です。

 しかし、必ずしも長期間の育休・時短が必要でない方で、かつ復帰に前向きな女性には、一刻も早くフル復帰できるように後押ししていただきたいと思います。目安としては、昇進候補の人材であれば、育休半年前後、遅くても1年以内の復帰。時短に関しては、ゼロ歳だと延長保育に入れない保育園もあるので、できたら1年以内、遅くとも3年以内にフルタイムに戻すことをおすすめしています。このくらいのブランクであれば、復帰前とそれほど遜色なく仕事を進めていけるのではと思います。


時短が多い組織は、軋轢解消のためのサポートする人に昇給などで報い、テレワークを推進

早期復帰希望者にこそ、きちんとしたサポートを

 ただし、何もなしに復帰しろといっても、特に認可や認証保育園に入りやすい4月以前に復帰するのは容易ではありません。

 東京都内の無認可保育園の場合、高いところだと月に20万円以上、フルタイムで自費でシッターを雇えば、少なくとも月40〜50万円はかかるでしょう。

 実際、早期復帰を望んでいたけれど、出産時期が2月、3月になってしまったので(保育園での養育が可能なのは、生後57日以降であることがほとんどです)、翌年度の4月入園に間に合わず、1年以上休まざるを得なかったといった声もよく聞きます。ですから、意欲的な方を早く戻すためには、その制度整備が必要になってきます。リモートワークの整備や、ベビーシッターの補助などを、どんどん導入し、社内に周知して使い方から指導してあげてください。

 女性活躍先進企業であるダイキン工業には、「育児支援カフェテリアプラン」という制度があります。産後6ヵ月未満、そして1年未満に復帰した場合、シッター代などの補助や柔軟な勤務形態などの支援を通常より多く受けられるそうです。同社の野間友惠人事本部人事企画グループ長(部長)によると「ゼロ歳児のほうが保育所の入所がスムーズにできる、キャリアブランクが短いほど、早く仕事の感覚を取り戻せる、現場での人員配置をしやすくなるなど多くのメリットがあった」そうです。同社では、2022年現在、1年未満の復帰が4割、6ヵ月以内も一定数いるとのこと。同社広報曰く「早期復帰支援は、女性活躍という意味で、最も効果的だった施策の一つ」とのことでした。

 同じく先進企業のポーラでも、本人の意思を尊重しながらも、希望する方には半年程度の復帰を奨励し、「職場復帰サポート手当」や「育休復帰者への面談サポート、復帰者同士のコミュニティ」を用意しているということです(同社及川美紀社長)。

男性育休こそが「男の家庭進出」の第一歩

 2022年10月より「産後パパ育休」が法制化されました。父親が通常の育休に加えて、別途取得できるもので、子の出生後8週間以内に4週間まで、分割して2回取得できます。育休給付金の対象にもなります。

 積水ハウスの調査によると、今は採用時に就活中の男性のほうが、男性育休の取得率を気にするというデータがあります。「育児は女性だけのもの」という時代は、もう終わったのです。

 現実問題としても、女性だけが育休、時短を取得するということは、夫側が勤務する企業が、妻の勤務先の制度に一種のタダ乗りすることになります。これでは、少し前に主流だったパート主婦が、時短正社員女性に変わっただけという状況で、結局、仕事は男性がメイン、育児家事の負担はほぼ女性にかかってくることを前提としています。女性の社会進出と、男性の家庭進出はいわば表裏一体なのです。

育児は女性のもの、という「タダ乗り」時代の終焉

 いまだに育休をただの休暇だと思っている男性がいますが、特に新生児の育児は個人差こそあれ、24時間体制で仕事より大変なこともたくさんあります。出産と授乳は女性にしかできませんが、それ以外のことは父親もできるはずですし、そもそも人間は母親だけで育児をする動物ではありません。

 男性も育児を経験してこそ、初めてその大変さも面白さも理解できる。弊社にも、すでに1年以上の育休を取得した男性がいますが、仮に短期間でも取得すれば「女性は子供を産むたびに休めていいなあ」などと言う方は減るでしょう。育児と仕事を両立することを真剣に考えた結果、だらだら残業するのではなく、仕事を効率よくこなせるようになったという男性もいます。

プレジデント総合研究所 佐藤
プレジデント総合研究所 佐藤