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女性の昇進意欲と現実のギャップを埋めるには?「裁量のある働き方」を伝える意識改革

目次[非表示]

  1. 1.「管理職はプライベートが犠牲になる」のウソとホント
  2. 2.女性は昇進するほどに男性より幸福度が高くなる
  3. 3.なぜ意欲と現実のギャップが起こるのか?
  4. 4.一般社員が抱える「上司待ち」という時間ロス
  5. 5.昇進すれば、驚くほど意見が通るようになる
  6. 6.持ち帰りゼロへ。社内外での「影響力」と「スピード感」
  7. 7.名刺の肩書きが守ってくれる、目に見えない信頼と敬意
  8. 8.責任の重さより「自分で決められる自由」に目を向けよう

 「管理職になるとプライベートが犠牲になる」。多くの女性が抱くこの不安、実は大きな誤解かもしれません。データによると、職位が上がるほど女性の幸福度が高まり、特に「子持ち管理職女性」の満足度が極めて高いという意外な現実が浮き彫りにされました。一般社員時代の「上司待ち」という時間ロスを解消し、仕事も私生活も自らコントロールできる「裁量権」のメリットを詳しく解説。責任の重さ以上に、昇進によって得られる「自由」の価値を解き明かします。

※本稿は、木下明子『図解!ダイバーシティの教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「管理職はプライベートが犠牲になる」のウソとホント

 「管理職になると滅私奉公させられて、プライベートが犠牲になる」 私が、管理職候補の女性への取材や調査で、すでに何十回も聞いた言葉です。 実際、アンケート調査をすると、昇進をためらう女性の多くが、その理由を「プライベートとの両立が困難になるから」と答えており、その割合は男性より圧倒的に多いのです。

 もちろん今の日本社会では、現実的に育児や家事、そして介護の負担が相対的に女性にかかってきがちなのは事実ですから、彼女たちが昇進をためらうのも当然といえるでしょう。 管理職としての責任の重さを男性より強く感じているのも女性たちです。

出典/『プレジデント ウーマン プレミア』2022年秋号「ダイバーシティインクルージョン大調査」より

 では、現代の管理職の女性は、本当に男性や一般社員よりも不幸なのでしょうか? 下図は、昇進した直後の幸福度ですが、この段階では確かに女性管理職より男性管理職のほうが高くなっています。 しかし実際、管理職になってからの幸福度を聞くと、結果は下図です。 男女ともに職位が上がるほど幸福度は高くなっていますが、実際に「課長」「部長」「役員」と昇進するほど急カーブで幸福度が高くなるのは、実は女性なのです。

出典/『プレジデント ウーマン プレミア』2022年春号 『昇進からお金、プライベートまで1200人『意識比較」大調査』より

女性は昇進するほどに男性より幸福度が高くなる

 でも、これは子供のいない女性の話なのでは? 自由なシングル女性だったり、既婚でも子供がいないから、男性並みに仕事にまい進できるだけでは? という疑問を投げかけた味くなる方もいるでしょう。

 ところがどっこい、実は子供のいる管理職は、さらに幸福度が高い(ちなみに、離婚した子持ち管理職女性の幸福度は、さらに高いです)。 プライベート、仕事、時間の使い方、すべての項目で子供のいない管理職女性より、子持ちの管理職女性に軍配があがっているのです。

出典/『プレジデント ウーマン プレミア』2021年秋号「幸せな管理職たちの24時間のリアル2021」より。n474


 私は、それこそ10年以上前、『プレジデント』編集部にいる頃から、この手の調査を何度も担当してきましたが、結果は毎回だいたい同じです。 昇進意欲は女性より男性のほうが高いのに、管理職女性たちの幸福度は男性よりも高いのです。「ためらっていた管理職、なってみればとっても幸せ」が現実なのです。 私自身、昇進できてとても幸せです。

なぜ意欲と現実のギャップが起こるのか?

 では、なぜこの手の意識と現実のギャップが起こるのでしょうか? 考えられる理由はいくつかあります。

 一つは、社内にも家庭内にもロールモデルが乏しかったり、上司が同年代の男性と同じように管理職になるべく育成していなかったりして、現実の管理職のイメージがわかないことです。 実際、自身のお父さんが連日遅くまで残業していて、家事育児はすべて専業主婦のお母さんに任せっきりだった。 同じく、働き方改革が定着する前の上司が会社に滅私奉公させられている姿を見て、「私にはあそこまではできない」と考えてしまった。

 私自身、管理職の最大のメリットは「裁量のある働き方」ができる点だと思っていますが、この点に気づいていない女性があまりに多いのです。

一般社員が抱える「上司待ち」という時間ロス

 一般社員であれば、多くのことを上司の指示に従うしかありません。 自分がいかに早く仕事の成果を提出しても、上司がこちらの都合や時間を考えず、なかなかチェックをしてくれない、決断してくれなければ、ただ待機している時間が生まれます。 若いほど自分の裁量で進めていくのは難しいですから、「その間にこれをやっといて」といった上司の指示がなければ、何もしない空隙の時間が生まれるわけです。 正直、これほど無駄なことはありません。

 私自身も昇進する前は、手早く仕上げた原稿を当時の上司に提出したところ「ぱっと見問題はないけれど、他の記事がまだそろってないので、全部のバランスを見てから決めたい」と言われて、1週間以上待たされるなんてことはよくありました。 ようやく戻ってきたと思ったら、だいたい赤字は誤字1カ所だけだったりするのです。 すぐにチェックしてもらえれば、作業をどんどん次に進めていけますが、部下の立場では「早くしてください」とはなかなか言えません。 上司に悪意がなくとも(実際、この元上司も悪い方ではなく、むしろ部下思いの方でした)、どんどん時間は浪費されていきます。

 働き方改革の浸透で、こういう方はだいぶ減りましたが、私生活を犠牲にした長時間労働を評価する上司の下につけば、部下のプライベートもどんどん犠牲になるのです。

昇進すれば、驚くほど意見が通るようになる

 しかし、自分が上司の立場に立てば、状況はガラリと変わります。自分がスピードアップすることで、組織全体の動きを早くすることができるからです。 部下から上がってきた仕事は、すぐにチェックする。 だめならだめですぐに戻す。私の場合は、原則24時間以内にはチェックすると部下に伝えています。

 ただし生来の注意欠陥でメールをよく見落とすので、返信がない場合はリマインドしてもらっています。 どうしても時間がかかるときは、あらかじめその旨と理由を伝えておけば、部下も腹落ちして、ほかの仕事に着手できます。

 自分が合理的かつ効率的に早く進めていくことで、部下も「あの上司は仕事や決断が速い」と感じ、そういう上司が上に行けば行くほど、組織全体の動きも早くなっていきます(前述の上司のように、逆の場合は逆の状況になりますが)。

持ち帰りゼロへ。社内外での「影響力」と「スピード感」

 それでも仕事が遅いタイプの部下がいる場合は、一人一人をよく観察します。 仕事を細切れにし、小さな締め切りを設定して声がけしていくと、スムーズに進むタイプもいれば、とっかかりが遅くても、信じて任せておけば最後に集中力を発揮してやり切るタイプもいます。 どちらにせよ、病的に遅いタイプ以外は、対処法はあるわけです。

 自分や家族の体調が悪いなど、上司側にもプライベートで何かありそうなときは、管理者として会議をずらすことだって可能ですし、とにかく上司自身が長時間労働をせず、それを絶対に評価しないと言い渡せば、部下もだんだん残業しなくなります。

名刺の肩書きが守ってくれる、目に見えない信頼と敬意

 権限が増せば、社内外で自分の意見を通すことも可能です。 私自身、一般社員のときに、ものすごい労力をかけないと通らなかったような意見が、管理職になったら、それこそ一言で、すっと通るようになったことが何度もあります。 突然、敬語になったり、態度が豹変したりする人もいます(これが人間として正しいかはわかりませんが、現実です)。

 社外に出ても、同じです。 名刺に役がついていれば、それだけで一目置かれますし、話も通りやすい。 今まで、想定外のことを聞かれたら「上司の同意を得てきます」「持ち帰ります」などと言っていたのが、その場で決済できるようになり、何日もかけていた商談が一瞬で済むことも多くなるのです(自分の性格や能力は役がついただけで一夜にして変わるわけではないのに、なんだかなあ……と思うこともありますが、組織や、そもそも人間の社会ってそんなものなのです)。

責任の重さより「自分で決められる自由」に目を向けよう

 自分の意思で決められることが多いほど、人間は自由になれます。 男性たちの中には、ここに気づいていて、自分が上に上がれば、いろいろなことを変えてやろうと、昇進を心待ちにしている人もたくさんいます。

 女性は、まだここに気づいていない人が多いようですが、実際、女性管理職に取材をすると、この思わぬ「裁量権」を得ることで、仕事もプライベートも楽になったという方が本当に多いのです。

プレジデント総合研究所 佐藤
プレジデント総合研究所 佐藤